VRの魅力に溢れる『Vなま』
- 出版社/メーカー: ソニー・インタラクティブエンタテインメント
- 発売日: 2017/10/14
- メディア: Video Game
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要旨
『Vなま』はVR体験とゲーム体験のバランスが良い万人向けの作品。見下ろし型の視点でプレイするRTSとVRは酔い対策にもなり相性が良い。
共にテーブルを囲む魔王やムスメと共にプレイするのは賑やかで楽しく、眼下で動きまわるキャラクター達が愛らしい。
強いて欠点を挙げるなら5000円という強気な価格か。3000円台なら文句なしだった。
VRデビューした人にオススメ
VRの魅力というと迫力ある臨場感を思い浮かべる人も多いだろう。例えば『バイオハザード7』の様なホラーや『グランツーリスモSPORT』の様なレースといった作品だ。
そのようなジャンルの作品と比べRTSのVR化は確かに地味で魅力を伝えにくい。しかし、ありがたいことに『Vなま』の魅力を伝える助けとなる無料コンテンツがPSVRにはある。
それがVR人形劇である『Allumette』とVRプロジェクトマッピングを少女と鑑賞する『傷物語VR』だ。
リアリティを追求した写実的な映像が逆に違和感を増強するケースも多く、童話やアニメ的な世界の方がVR空間に入り込む感覚を強く得られることがある。
アニメ調である『Vなま』の愛らしいキャラクター達が動きまわる姿を眺める楽しさは『Allumette』と通じる。またキャラクターと一緒にフィールドを鑑賞する空間の居心地の良さは『傷物語VR』で堪能できるだろ。
『傷物語VR』のモデルでも隣に居る感覚は感じられる
この二つの楽しみが合わさった『Vなま』には、魔王の部屋で破壊神としてプレイする確かな臨場感があるのだ。
ゲーム部分は無難なRTS
本作はRTS(リアルタイムストラテジー)と呼ばれるAIが操作する駒を使って戦うボードゲームのようなジャンルの作品である。
公式サイトには食物連鎖を駆使して世界征服!とあるが『Vなま』はそんな小難しいシステムではなく、視覚的で直感的な操作ができる『神コン』と合わさってすんなりゲームの世界に入り込めた。
視覚効果で直感的な操作が出来る『神コン』は素晴らしい。
餌を用意して魔物を繁殖させ数の暴力で勇者達を蹴散らし、王のいる城を攻め落とせば目的達成と分かりやすい。
育てた魔物を生け贄に高位の魔物を召喚し支配地域を拡大・維持し、折を見て『破壊神スキル』で一気に戦況を動かすのだ。
やることは簡単だけどリアルタイムで戦況が変わるので、ステージが進むごとにフィールドが広くなり忙しくなってくる。
ラストに育て上げた魔物の群れが勇者達が守る城へと押し寄せる姿を眺めるのは爽快だ。
とは言えゲーム単体として見た時の難点は三つ。
まず魔物のバリエーションとプレイ幅の少なさ。VR体験を重視したのかRTS初心者やライトゲーマー向けと言った出来映。
同じ魔物の巣を配置し、育ったら吸い込んで高位の魔物を召喚するだけでクリアできる。面白いのだが物足りなさを感じてしまう。
次はプレイしていると同期がズレてあらぬ方向へ向く『神コン』。コントローラーを軽く振ると直るのだが、直感的で操作しやすい分だけ同期がズレた時の不便さが際立つ。
VR全般にいえるが暗所の方が同期しやすい傾向がある。場合によっては部屋の電気を消した方は良いかもしれない。
最後はボリュームの少なさ。丁寧に作られているのが分かる良質な作品なのだが、ボリューム不足で少し割高に感じる。3000円台なら大満足だった。
それでも圧倒的に酔いにくい作品なのでVRデビューしたての人にもオススメできる。
余談だが今思うと『Robinson The Journe』の強気な価格設定には苦笑せざるを得ない。光る所はあるが難点も多く高すぎた。
こだわりを感じる魔王とムスメ
破壊神としてゲームの世界に召喚されたプレイヤーは、魔王とムスメと共にテーブルを囲みながらプレイする。
その魔王とムスメがプレイヤー自身に関わってくるのが面白い。ゲームを再開すれば「こんばんわ。破壊神様」と挨拶され、ゲームプレイの最中にもコメントを挟んでくる。
コントローラーを落とせば魔王が注意してくるし、不用意にテーブルを回せばムスメに怒られる。随所に散りばめられたメタ発言も実に楽しい。
実のところ本作はキャラゲーでありVRで遊ばなくても十分楽しい作品に仕上がっている。プレイするほどに魔王とムスメのキャラクター作りにこだわりを感じるのだ。
プレイヤー自身に関わってくる魔王とムスメに親しみを覚えたとき、プレイしていてVR空間を用いたコミュニケーションの素晴らしさを予感させてくれた。
ムスメをこの作品だけで終わらせてしまうのは余りに惜しい。
面白いやつらと一緒にテーブルを囲んでゲームをする体験をVRで楽しめる。『Vなま』の魅力はこれに尽きる。