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[ネタバレ]The Order: 1886 で学ぶ産業革命 part3 ~産業革命と性文化~

 The Orderをより楽しむための本シリーズ

 part3 は、産業革命と性文化です。

 今回はあんまりゲーム関係ないけどネタとして書きたかった。

 

脱禁欲の社会へ

 エネルギー革命・農業革命でマルサスの罠から脱却し、民衆が集まり都市化が進んだイギリス。この時代に性習慣の革命も起きている。

 農村でキリスト教の禁欲を後押ししたのはマルサスの罠の影響が有ったとされる。労働力としての子供は重要だが、獲得できる食料には限りがある。農村では自然と人口調整の必要性に迫られた訳だ。そこで重要となったのが貞操観念である。

 ところが産業革命で都市化が進み労働者として生きる道が開けて来ると、若者が農村を離れて都市部に集中してくる。

 閉鎖的な農村と違い異性も選び放題の都市部に、独り暮らしの若い男女が集まれば貞操観念なんて無いも同然だ。若さの勢いと情熱に後押しされ人口革命の引き金となる。しかし、同時に母子家庭の増加や地方の高齢化と言う問題も生み出した。

 

 

紳士淑女と言う称号

 産業革命で力を持った資本家は、身分と言う枠組みを越え貴族の様な生活が出来る様になった。華やかな生活を送る資本家達は紳士・淑女(ジェントルマン・レディ)と呼ばれ民衆の憧れの存在となる。

 

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ウィンドウ・ショッピングと言う概念はここから始まる。

 

 この憧れのが消費と労働を加速させた。沢山働いてお金を得て資本家と同じ様な服装をしたい!その願望が民衆レベルでファッションの流行を促した。その願望の一端に「モテたい」があった。紳士風の格好をすれば女性が寄ってくる。淑女風になれば資本家の目に留まるかもしれない。こうしてファッションは民衆に浸透していった。

 この消費革命は日本でも起きている。家電三種の神器やブランド物を求めて一生懸命に働いて沢山消費する。いつの時代も経済の発展は消費に対する欲求・衝動が原動力なんだろ。

 

高級娼婦と売春婦

 発展の原動力となった消費革命は富の局在化を進め格差を拡大させた。その象徴の一つが高級娼婦と売春婦だ。今も昔も、女性が生活する為に体を売ることは多い。

 娼婦と売春婦。この二つ、似ているようだが全くの別物だ。明確に定義される訳ではないが娼婦は娼館で働いている「労働者」を指し示す事が多く、売春婦はどちらかと言うと路上で仕事している者を示す。両者は仕事の際の安全性が全く違う。

 娼館に足を運ばせる人気の娼婦はアイドルの様な存在であり、稼ぎを元手に事業に着手したりと女性の貧困からの脱出に一役買っていた。さらに高級娼婦の一部は貴族の愛人として上流社会に入り込んでいった。

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 娼婦のプロマイド。ファンへのプレゼントだ。

 

 店に守られる娼婦と異なり売春婦は毎回リスクを負っている。路上で仕事をする売春婦は娼館の様に用心棒が居る訳でもない。完全に自己責任の世界である。娼館に行く資金を持たない人間が相手なので、タダ働きや危険な目に遭うことも避けられない。

 それだけのリスクを負ってでも売春と言う手段なしには生活が出来ないのだ。例え、切り裂き魔が夜な夜な殺戮を繰り返していようが、彼女達は生きる為には街へ出て仕事を探さなければならない。彼女たちは切り裂き魔が逮捕されるまで待てなかったのだ。

 

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 安定して客が取れない売春婦は互いに客の斡旋もしていた。

 

 

産業革命が生んだ発明

 その一つ目は避妊具。価値観の変化が性病を拡大させることになり、イギリスは性病予防や性病治療に悩まされていた。古代から動物の腸等を利用した避妊具は使われていたが、耐久性に優れているとは言えず「無いよりはマシ」と言う程度の物だった。

 この時代、高級娼婦や売春婦の存在により貴族から民衆まで性病に悩まされることになる。そんな中で登場したのがゴム製のコンドームである。発明の基礎はゴムを発見したイギリスに有りそうだが、その実は良く解っていないようだ。

 発明したのは高級娼婦と言う文化を作ったフランスか、民衆レベルで性病が深刻だったイギリスか。どっちもあり得そうで困る。個人的にはフランスの気がする。貴族がこっそり作らせたので、コストも高く商売として発展しなかったと予想している。いや、使用感が悪かったのが原因かも。なにせ日本製コンドームは優れた使用感が評価され市場を握ったのだから。

 

 二つ目はいわゆる「大人向けの玩具」だ。なんで発明されたかなんて関心を抱いた事は無く、発明の切っ掛けがPMSの治療だと知って驚いた。なるほど!と感心してしまった程だ。PMSと言うと男性には馴染みが無い言葉だと思う。PMSを当時の病名に言い換えるとヒステリーだ。

 1880年代イギリスだと言うのでゲームよりちょっと後の時代になる。淑女の皆様はヒステリーに悩まされていた。ヒステリーは子宮が原因の病気と言う認識は世界各国で共通で、漢方などの内服薬も子宮に作用させる目的が多い。今も命の母辺りは個人差は有るが中々良いようだ。

【第2類医薬品】命の母A 840錠

  そんな訳で当時の医師はヒステリー治療として女性器をマッサージしていたそうだ。薬じゃなくて直接刺激とはイギリス人は中々ぶっ飛んでる。そんな訳で連日の治療行為で医師が腱鞘炎になってしまう!と言う難題から医療機器の開発が行われた。

 その結果生まれた物が「電動」だ。そんな電動器具が作られるなんてエジソンやテスラも予想しなかっただろう。 発明された「電動医療器具」はその後、健康器具・美容器具として「ポータブル・リラクゼーション」の名前で販売されたとか。

 

  そんな発明秘話を描いた映画が「ヒステリア」だ。未見なので近いうちに見てみようと思っている。


ゲーム中の性描写

 国内では珍しく人体欠損の部分には規制が入らなかったのは、国内のゲーム業界に一石を投じたと言える。このゲームは欠損した部分の体内までリアルに作られているので驚きだ。

 しかし、残念ながら性表現に関しては厳しい対応となり、残念ながら国内版は規制の対象としてカットされてしまっている。映画でOKならゲームでも良いじゃないかと思うのは私だけだろうか。

 ゲームで性行為を見たいわけじゃないけれど、描写として必要性が有るならば残していいと思う。娼婦も立派な職業の一つなのだから。

 

 特に乳首を消す雑な修正する位なら服を着せろ!と文句を言いたい。

 

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 乳首が無い女性に躊躇う男の気持ちも分かる。

 

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