ライフ イズ ストレンジは人生の物語
賛否両論のエンディングとなったライフ イズ ストレンジ(以後LIS)。映画ではなくゲームだからこそ『より良い終わり』を望む人が居るのも理解できる。
私には二つとも納得できる終わりだったが、プレイヤーの選択によって印象は変わりそうだ。
そこで私のエンディングに対する感想をつらつらと記そうと思う。個人の解釈とネタバレが多いのでご了承を。
対照的なマックスとクロエ
レイチェルを探すマックスとクロエの冒険は楽しかった。しかし、話が進むに連れて二人の関係に不安を感じる様になっていく。
評価される事こそ恐れているが才能に恵まれ、クラスメイトからも認められている様子が伺えるマックス。
時を戻す能力が彼女に自信と強さを与え、終盤のマックスは冒頭と比べ大人びており魅力的になった。
一方のクロエは父親の死を切っ掛けに人生に対して悲観的で、抗うつ剤が必要なほど絶えず孤独と不安が付き纏っている。そんな彼女の自暴自棄さからくる明るさは危うい。さらに親友レイチェルを失いクロエは生きる目標を見失っていく。
物語の序盤では割とマックスがクロエに依存していたが終盤ではそれが逆転し、クロエと離れてもやっていけるマックスとマックス無しでは難しいクロエという印象になっていた。
蝶が示す二つの意味
時間をテーマにした時に定番となりつつあるバタフライエフェクトと美しいモルフォ蝶のトーテム。LISでも両者を取り入れていた。
蝶の羽ばたきが遠い海洋で嵐を生む。そう表現され有名なバタフライエフェクト。元はカオス理論であるローレンツ方程式の図が蝶に似ている事から来ている。
ローレンツ方程式は起点が大勢を決定する『初期値鋭敏性』に支配されており、バタフライエフェクトとは変わる事を許さぬ運命論に近い考え方だ。
本作はそれをそのまま採り入れている。クロエを助けた時の蝶の羽ばたきが強大な竜巻を生んでしまう。過程で何をしようと結果は変えられずアルカディア・ベイを守るには起点となるクロエの死が必要なのだ。
そしてエピソード1『サナギ』でトーテムやネイティブアメリカンに触れられる様に、LISの背景には変化を受容するネイティブアメリカンの存在がある。
マックスが身に着けているドリームキャッチャーもその一つ。
ネイティブアメリカンには預言や夢占いの文化があり、アンティル ドーンやマックスの予知はそこから来ているのだろう。夢を通じて過去と未来に想いを馳せ、自然を愛しその変化を受容していたそうだ。
ネイティブアメリカンにとって蝶は『変化』と『勇気』のシンボルだ。魂の成長を促す蝶のトーテムとの邂逅を機にマックスは変わっていく。
私はLISを変えられぬ運命とマックスの成長物語として捉えていた。
そして迎えたエンディング
クロエを失っても耐えられるだろうマックスと、多くを犠牲にするほど自分の人生に価値を見出だせないクロエ。私はクロエを犠牲にすることを選んだ。
過去を変えてもクロエが死に向かう結果になったことがそれを後押しした。事故で車イス生活になったり、竜巻に襲われたり、銃殺されたりと、何度過去を変えてもクロエは死に見舞われた。
何をやってもクロエは死ぬ運命なのだと感じた。そして何度もクロエの死を体験したマックスなら、クロエが居ない世界を受け入れられると思ったのだ。
また、もう一方の街を犠牲にするエンディングも納得できる終わりであった。
多くの代償を支払ってなおクロエを選んだマックスの存在が、希望を失い人生を見失っていたクロエの道を照らすだろう。クロエの為に力を使い続けたマックスがクロエを選ぶのは当然かもしれない。
街を捨て二人で罪を背負うことでクロエは人生を取り戻す。マックスはこの瞬間に真の意味でクロエを救ったと言える。
最後の2択は「マックスの物語」にするか「二人の物語」するかの選択だった。
自分はウィッチャー3でも似たような結果になった。ゲラルトとシリ、マックスとクロエと言った「二人だけ」を中心に据えきれず、主人公のエゴを押し通し切れなかったのだ。
この点ではラスト オブ アスのジョエルを見習いたい。
王道だからこそ楽しかった
本作におけるストーリーの大筋は王道で驚きは少ない。途中から事件の真相は見えてくるし結末も予想範囲内だった。
むしろ楽しかったのは失敗パターンの数々だ。弾を外したら車が爆発したり、交渉で予想外に怒らせてしまったり、失敗を繰り返す事で相手の内面を知れたりした。
王道のストーリーだからこそ失敗が楽しかった。都合の良い映画的な場面でも、数々の失敗を見るからこそ結果に説得力を感じる。
だからマックスが全てを得られなくても納得が出来たのだろう。もし完全なるハッピーエンドが提示されていたら少しがっかりしたと思う。人生がテーマの物語としてはこれが相応しい。
私が下した選択達
オマケとして最後に自分が下した選択ついて触れて終わろう。
サナギ
・ネイサンのことを話した 65%
銃を持ってたら普通は話す。本人にバラされると思わなかったけど。
・ビクトリアをからかった 31%
この時点で自分の中のマックスは結構強気だった。
・デイビッドとケイトの写真を撮った 18%
証拠がないと駄目じゃない?そう思ったのだが意外と少数派。
・クローゼットに隠れていた 37%
家族の問題に踏み込むべきか迷った。
時間切れ
・証拠を集めるまで待つように言った 69%
そりゃあ、助けなかったこと責められてまで写真撮ったんだもの。
・ケイトの電話に出た 79%
ここでクロエを選んだ人はエンディングが決まった感がある。
・フランクを撃たなかった 47%
ちなみに最初は撃とうとして、結果を見てマックスが危なそうなんでやめた。
・ケイトを助けた 58%
まさかの巻き戻せないパターン。選択の重さを知る素晴らしいエピソードだと思う。助けられて良かった。
・ジェファソン先生を責めた 13%
証拠がないので消去法で。ちょっと酷だとは思ったけど責任取るなら先生かな、と。
カオス理論
・お金を盗まなかった 53%
結構盗んだ人がいてびっくり。やっぱりクロエの為?
・クロエにキスした 78%
キス、するよね。
・デイビットに味方した 17%
戦争のトラウマと義理の娘との関係に悩む彼を責める気はしなかった。
・フランクの犬に怪我をさせなかった 92%
犬に罪は無い。
・デイビットの銃はフランクが持っている 33%
事実を伝えた気がするのだけど、少数派だから勘違いしたのかも。
暗室
・クロエの頼みを断った 48%
ここで頼みを聞かなかったことが最後の選択を決心させた。
・ネイサンを殴るウォーレンを止めた 54%
自分はネイサンを嫌いになれなかった。
・誰もケガをしなかった 69%
フランクも悪い人じゃなかった。こういうイベントの数々が街を犠牲にさせなかった。
・ビクトリアに警告しなかった 9%
いや、ビクトリアは嫌いじゃないよ。かえってムキになりそうと思っただけで。
偏光
・クロエを犠牲にした 54%
選択とは犠牲を選ぶことなのかもしれない。
改めて見るとやっぱりクロエ中心には動けなかったのが分かる。特に私の場合は彼氏になりそうなウォーレンの存在が大きかったっぽい。