「3」この数字に引っ掛かり発売当初は購入を見送ったウィッチャー3。傑作を逃すところだった。危ない。危ない。
メインクエスト並の気合いが入ったサイドクエストが多く、サイドクエストがやめられないし終わらない。ミニゲームであるグウェントにも夢中になってしまい、ささっとクリアして終えようという思惑が外れた。嬉しい誤算である。
ウィッチャー3は自分だけのゲラルトに出会えるゲーム。二度と同じゲラルトには成れないと分かっているのでクリアするのが勿体ない。クリアしたくないとすら感じる作品も久しぶり。
私が見届けたエンディング
シリはゲラルトに剣を返し大陸を統べる女帝となる道を選んだ。突如くる娘の旅立ちだ。
戦争の終結によりテメリアは国を取り戻し、ヴェレンは平穏を取り戻した。そして帝位の継承が行われる。
強靭な兵士を擁する軍隊と強力な女魔術師会を得たニルフガード帝国の新たな支配者だ。優れた剣技と強力な魔力を持ち合わせたシリに相応しいとも言える。
ダンディリオン曰く実父の政治力とゲラルトの心を受け継いだシリは優れた支配者となったそうだ。
私のエンディングで唯一の心残りは兄妹同然に育ったヤルマールとの断絶だが仕方がない。略奪を行う彼ら存在は決して捨て置けない。
私はこれで良かったのだと思っている。彼女が戻ってきただけで十分だった。
確かに、この結末を受けて多くの後悔がある。だが納得はしている。振り返ると自分のプレイではこうなる運命だった。
感情移入させるリアリティある表情
余り感情を表に出さないゲラルトだが、その目や眉は実に表情豊かで言葉を発しなくても心情が読み取れる。ゲラルトの表情が大きく変わるシリが関わるシーンはどれもとても印象的だった。
昔のゲームはどちらかと言うと小説に近かった。キャラの表情を表現できないから、テキストと状況から心情を推測して楽しんだもんだ。
それが最近のゲームはどうだろう。声は入ってるし些細な表情の変化も読み取れる。気が付けば映画にも負けていない。
特にシリの表情は素晴らしい。冒険者の顔から、ゲラルトに見せる子供の様な顔。場面に合わせ違うモデルを使ってるのかと思うくらい。
その中でも凄いと思ったのが、ヴェセミルを弔うシーン。シリの美しい碧の瞳が潤み、激しく揺れ動く様にハッとした。彼らは確かにゲームのキャラクターなんだが声優の素晴らしい演技もあり深く感情移入が出来た。
徐々にゲラルトに同調していった
ウィッチャー3はゲラルトの心の囁きになるゲームといえる。プレイヤーはゲラルトが迷った時に導く役目を担っており、時にゲラルトがプレイヤーの思惑と違った結果をすることもある。そういう点では決して自由度は高くなかった。
プレイヤーはゲラルトならこう言うだろうか?こうするだろうか?そう思いながらプレイを続け、気が付くと自分だけのゲラルト像が創られている。
私はプレイ当初ではビジネスライクなプロをイメージして選択していたが、終盤には一貫性を保てなくなっていた。
自分のゲラルトは中立を保つこともなく、プロとして仕事をするウィッチャーではなかった。シリを探す旅の中で多くの人や怪物と出会い、その時感じたままにプレイせざるを得なくなったのだ。
特に自分にとって転換となったのは、ドップラーが化けたシリの姿をゲラルトに見せた時だ。探す上で知っておいた方が良いと思ったのだが、その反応を見てゲラルトに申し訳なく感じた。
これを境にゲラルトの気持ちを大事にしようと思う様になっていった。
ゲラルトからシリの物語へ
自分はずっとゲラルトの気持ちを大事にしてきたが、終盤でシリと過ごすうちにシリの将来のことばかり考えていた。シリにとって良い選択はなんだろう。何をしても後悔する予感がした。
ウィッチャー3の冒険は迷いの連続だった。どうすれば良いのか。そもそも、良い結果とはなんだろう。選択の時は絶えず訪れ、後悔は避けられない。
シリの将来に関しても迷いの連続だった。その中で人生と同じく後悔は避けられない。ならば結果は別として自分が納得出来る選択をしよう。そう決めた。
ありがたいことにバッドエンドには至らなかったのでほっとしている。
多分、この頃からゲラルトとの乖離が進んでいた。思い返せばフィリパの言葉がそれを示していた。そう、ゲラルトは政治に関与せず娘としてシリを連れ出すつもりだった。
しかし、プレイヤーである自分は既に政治的な関わりを持つ選択をしていた。テメリアの存続を目指したし、シリを守るためには国家が必要だとも感じ迷っていた。
ウィッチャー3の冒険は序盤で世界観と非情さを描き、後半では政治を描くことが多かった。そして物語を通して多くの家族・親子の関係が描かれてきた。
自分はどうもスケリッジのクラフに影響を受け過ぎた気がする。シリに決断を委ねた結果としてゲラルトに十分に「父親の時間」を与えてあげられなかったのは残念である。
人生を感じるゲーム
エンディングに到達して確かな満足感と穏やかな喪失感を感じている。ポーランドの人気小説が原作となるウィッチャーの世界はバルト三国の歴史が強く反映されている。そのためファンタジー作品でありながらも登場人物の人生を感じる力作だった。
プレイヤーに選択を迫るゲームは多い。ただ、これだけ丁寧で時間を掛けて作られたゲームは記憶にない。プレイヤーが費やした時間が選択に重みを持たせており、久々に濃密な体験ができた。
ところで画像に見られる様に、自分のゲラルトはスケリッジを過ぎた辺りから髪型を変えている。ちょっと髪型がシリに似てる気がしたからだ。
特に意識したわけでも無かったのだが、結果的に自分だけのゲラルトの物語となったと思っている。
次は髪型を変えずそのままのゲラルトでプレイして、今度こそゲラルトの物語にしようと思う。
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