アンドロイドを通して人間を描く
近未来のデトロイトを舞台に人類とアンドロイドの関係を描いた意欲作。アンドロイドは人類の道具か、パートナーか、それとも天敵か。
プレイヤーの決断で物語は変化し登場人物の運命は決まる。果たしてあなたの物語り結末はいかに。
総論
舞台や設定は興味深い。登場人物も魅力的。アンドロイドという設定をゲームプレイに巧みに組み込んでおり感心する。
多くの分岐が存在し、過去の決断が収束していく終盤は驚きも多い。
逆に分岐の多さから選択肢が意図した結果へと繋がらないシーンが存在し、幾つかの場面で没入感が削がれてしまった。
また周回すると納得できるのだが、初回プレイでは違和感があるシーンも散見された。
周回プレイが前提だが一本道の章が少し怠いのは残念。
作り込まれた舞台設定
人工知能が自意識を持てるのか。自意識を持ったアンドロイドと人間の違いとはなにか。これは『ブレードランナー』や『ウエストワールド』で扱われた人気のテーマでSFファンには堪らない。
物語はプログラムから逸脱した行動をとる『変異体』と呼ばれるアンドロイドを中心に描かれる。彼らはフェイシャルモーションにより人間臭さが感じられリアリティがある。
また優れた舞台となる都市デトロイトも、人工知能が社会に与える功罪が表現されており世界に説得力がある。
接客もアンドロイドが行う世界
音楽や文学も人工知能が作り始めている
アンドロイドなら理想の恋人が手に入る
本作ではアンドロイドが家事や介護を担い便利で快適である一方、一部の人は仕事を奪われ格差の拡大が問題となっている。
単純労働や風俗は貧困の受け皿としても機能してきた。その受け皿がアンドロイドのよって失われたら当然だろう。
ゲームを起動した瞬間から、作り込まれたアンドロイドと2038年のデトロイトに圧倒された。
設定を活かしたゲームプレイ
ゲームの制約をプログラムの機能として描き、メニュー画面まで物語とリンクさせるなど舞台設定を上手く使っている。メニュー画面でもゲームが続いていくのは印象深い。
危機感を煽るQTEの質も上々で、適度に失敗が許されQTEが苦手な人も受け入れやすい。特にアンドロイドの予測機能で予習させたり、成功率やリスクを表示するのは妙手だった。
演出やイベントに目新しさこそ無いが、結末が自身の決断で決まるので予断を許さない。交渉の緊張感、追跡劇の緊迫感、命運を担う決断、どれも素晴らしい体験が楽しめる。
少なからず欠点も感じる
私は恐らくグッドエンディングと呼べる結末に辿り着いた。この手しか無いという予定調和な結末だったが、彼らに未来へ繋がる道を用意でき満足である。
事件を追う『コナー』、革命を目指す『マーカス』、逃亡者『カーラ』の三者は魅力的に描かれ、結末への興味を掻き立てることに成功していた。だが全体を通して見ると少なからず欠点はあった。
まず一つは選択肢の結果が予想と外れる点。『ウィッチャー3』でも見られたが、何度か選んだ意図と異なる行動・言動をとられ戸惑ってしまった。
二つ目は展開が読めてしまうフローチャートの存在。そんな分岐が有ったのか!と驚く以上に、物語の流れが見通せてしまった。最後に確認させた方が良かっただろう。
三つ目の欠点は選択ではなく決断が多い点だ。情勢が緊迫しているのもあり、選ぶというか「する」「しない」という決断が多すぎた。
分岐と演出の多さに脱帽
- 出版社/メーカー: ソニー・インタラクティブエンタテインメント
- 発売日: 2018/05/25
- メディア: Video Game
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『Detroit Become Human』は『ヘビーレイン 心の軋むとき』や『UNTIL DAWN -惨劇の山荘-』と言った類似の作品からの進歩が見られる。
プレイして衝撃的なシーンに息を飲み、頭を抱える悩ましい決断を楽しんだ。10時間前後のプレイに熱中したのだ。クリア後も別の結末を見るために、もう一度プレイする意欲も十分ある。
多くのSF作品へのオマージュに溢れ『UNTIL DAWN -惨劇の山荘-』の様な元ネタを探すのも楽しい。
表向きはカジュアルだが細部はSFファンも楽しめる良作だった。