ヴァンパイア映画では科学的に銀アレルギーだったりと理由付けされているが、なんでそんなものが苦手なのだろうか。
西洋においてヴァンパイアや悪魔と言った邪悪な者を退ける力。破邪の力と呼ばれる代物の代表として銀や聖水がある。
中世ヨーロッパにおいて邪や魔と呼ばれる物の大半は感染症である。抗菌薬が登場するまで人間の歴史は感染症との戦いであった。
当時の人達の栄養状態は良いとは言えず、感染症と戦う力が十分では無かった。衛生的な生活も出来ないので絶えず感染症の脅威にさらされて居たことだろう。
そして多くの人が感染症との戦いに敗れ死んでいった。ベルゼブブと言う悪魔が蝿の王なのもその為だ。感染症を運ぶので、蝿は正に悪魔の使いと言う訳だ。
疫病を悪魔と呼ぶ感覚は日本人には解りにくいと思う。日本は水に恵まれて早い段階から衛生的な生活が出来た事と、宗教と民間医療が離れていた事がとても大きい。
銀の殺菌効果や清潔な水は、衛生管理が不十分な時代では、単純ながらとても効果的だ。特に衛生的な水の確保が難しいヨーロッパでは聖水の価値は高かっただろう。
そして、それらを提供したのが教会だったのだ。さらに言うとハーブ、つまり薬草の栽培と活用も教会が行っていた。
神の使徒である教会にとって感染症の治療は格好の奇跡と言うわけだ。
こうして物質的な側面からも「信じる者は救われる」が成り立った訳だ。もしかしたら、頻繁に金属の十字架を触れる事も手の清潔さを保っていたのかも知れない。
迫害された過去を持つキリスト教は、教徒を守る為に力が必要だった。民間医療はその一つとなった。信仰だけじゃ教徒は守れないのだ。
結果として理由こそ諸説あるが、魔女狩りを起こせる程の力を得た訳だ。生き方だけでなく命も握った教会が起こした最大の過ちである。
かくして、銀の十字架は今でもヴァンパイアの最大の弱点であり続ける。特に銃弾に加工すると言う発想から映画で大活躍だ。まとめて灰にされる事が増えたと言うことだけど。
走る様になって強くなったゾンビとは大違いだ。可哀想なヴァンパイア!