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人生はFPSゲーム。時々哲学。

 FPS特にCoDやBFが中心。 その他のPS4ソフトやVRゲームの感想・レビューや雑談なども記事にしています。 詳細はプロフィールへ。

ウィッチャー3に感じるバルトの歴史と風景

PS4ソフト・本体・周辺機器 PS4ソフト・本体・周辺機器-ウィッチャー3ワイルドハント(The Witcher3)

映画化もされるポーランドの人気小説

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 幾つもの2015年Game of the Year(GOTY)に輝いたウィッチャー3。そのシリーズ原作となるエルフの血脈:魔法剣士ゲラルトは、映画化も予定されているポーランドの人気小説だ。


エルフの血脈 (魔法剣士ゲラルト)

エルフの血脈 (魔法剣士ゲラルト)

  • 作者: アンドレイ・サプコフスキ,吉岡愛理,川野靖子,天沼春樹
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/05/30
  • メディア: 文庫
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 異界と繋がってしまった架空の世界を描いているウィッチャーシリーズだが、その内容は実ヨーロッパの歴史を強く反映していることが伺える。
 なるほど。それならポーランドの首相がオバマ大統領にゲームを贈ったのも納得できる。
 
 そこでウィッチャー3の物語に奥深さを与えたであろう歴史背景や舞台を調べてみた。
 本記事は一部エンディングに関するネタバレを含んでいる。注意されたし。

ウィッチャーの舞台となるバルト三国

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外務省: バルト三国と日本

 バルト三国とはバルト海に面した国の中でもエストニア・ラトヴィア・リトアニアの3国を示す。豊かな資源に誘われて強大な国家の侵略が絶えない長く戦禍に見舞われた地域である。

 ウィッチャー3が18世紀のバルト海沿岸諸国で起きた北方戦争をモチーフにしていると考えたのは、物語の大まかな流れに似通った点が見られたからだ。
  
 ドイツ由来となるリヴォニア騎士団の進出が原因で起きるリヴォニア戦争。その後スウェーデンの支配により築かれたバルト帝国。そのバルト帝国を奪い支配したロシア。これはエンディングのひとつ女帝エンドまでの流れと似たところがある。

 そこで戦地となったテメリアはポーランド・リトアニア共和国。北方を支配するレダニアはスウェーデン。侵攻してくるニルフガード帝国がロシアであると考えた。

 本記事では国家・都市・登場人物の面からバルトの歴史との繋がりを見ていきたいと思う。



 

舞台の中心にあるテメリア

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 エンディングによってはニルフガードの属国として復活を果たすテメリア。冒頭で『白銀の百合』に対する国民の強い思いが描かれているのが印象的だった。

 そんなテメリアは絶えず戦禍の中心となったバルト三国の中で、長く統一国家としての歴史を保てたリトアニアを模していると考えている。

 リトアニアは14世紀の戦争を期にポーランドと同盟し属国となり、ポーランド・リトアニア共和国となっている。この同盟は北方戦争後にリトアニアがロシア領になるまで続く。

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左の鷲がポーランドで右の騎士がリトアニア。ちなみにポーランド国旗をゲラルトが描くイベントがある。


 属国となりポーランド化が進んだリトアニアだが、その『白い騎士』の紋章は、その後も残り続けリトアニア領内にて国民意識を保つ重要な役割を示していた。

 現代日本に住む私達にとっても故郷の存在は大きい。自分を語るには何処で生まれ何処で育ったかは大事である。

 もしも自分のルーツ(祖先)を失えば大きなショックを受けることだろう。作中で『テメリア』の名を残す為に命懸けで戦った兵士たちが存在するのも頷ける話だ。

 そんなヴェレンの風景はリトアニアに通じる所がある。リトアニアの写真を見ているとウィッチャー3のサントラ片手にバルトを旅行したくなる位だ。
  


Untitled


001 20080419134702 Trakai Island Castle

Autumn in Vilnius


The beauty of Vilnius



美しきノヴィグラドはリーガに似る

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 魔女の火炙りで強く印象に残るだろうノヴィグラド。そのノヴィグラドの元となったであろう都市がある。それがラトヴィアで『バルト海の真珠』と呼ばれ観光名所として知られている司教都市リーガである。
 
 貿易都市でもあるリーガはロシアの毛皮を求めてやって来たドイツ商人が定住し教会を建てたのが始まりと言われている。その後、リーガには『キリスト教』を布教する為にドイツから武力を伴いやって来た『リヴォニア帯剣騎士団』の勢力圏となる。
 これはウィッチャーに登場する『永遠の炎』と『炎の薔薇の騎士団』にその影響が感じられる。


 しばらくしてリーガは200近いバルト海沿岸部の都市が参加する商業同盟であるハンザ同盟に参加する。
 そしてハンザ同盟が力を得るに連れ、教会を中心に発展したリーガは交易の拠点と宗教の砦として国家を越え機能した。

 ノヴィグラドが諸国の支配から逃れ自由都市として発展し、教団『永遠の炎』が強い影響力を有しているのもリーガがモデルであることを感じさせる。
 

 リーガも近代化が進み決して古風な都市では無いけれど一度は訪れたいと思える美しさ。ああ、バルトへ旅行に行きたい。


Riga 

HDR, Latvia, Lens Nikon 16-85mm f-3.5-5.6G ED VR DX AF-S Nikkor, Riga, Tirgonu Street.jpg

IMG_2637_RAW - Black Head Guild headquarters

The House of Blackheads, Riga, Latvia




歴史上の人物を模したキャラクター

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 ウィッチャー3では戦乱の地を舞台にした国の栄枯盛衰が描かれている。その中心となるキャラクター達は歴史上の人物に強く影響を受けていると感じる。

 まあ、日本のゲームで信長・秀吉・家康っぽいキャラがいるのと同じ程度であるが、それだけ人気の有る歴史上の人物達なのだ。


エムヒル皇帝

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 戦争が好きで内政に苦心しているエムヒルの姿はピョートル大帝を彷彿させる。

 ピョートル大帝が率いるロシアはバルト海域にいるスウェーデンを退け、ポーランドからリトアニアを奪っている。この流れは女帝エンディングに通じるだろう。

 ピョートル大帝は初めてロシア皇帝を名乗った男。幼い頃から戦争が好きで連隊・砲術・造船に興味を示し、強い軍隊を作るためにロシアのヨーロッパ化を推し進めた。

 彼は支配地域を現地の貴族に任せることで帝国のヨーロッパ化と国力の維持をしていた。ところが戦争のために厳しい納税と徴兵を課したので、国内にも敵が多く相次ぐ反乱と権力争いに苦心することになる。

 エムヒルが国内の貴族達に悩まされる描写はウィッチャー3の冒頭で描かれていた。そりゃあ、敵が多そうな性格だったもの。そんな彼がシリにパパと呼ばれている姿を想像すると、ちょっと笑える。


 

シリ

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 シリは二人の女帝が合わさっている印象。その生い立ちはエリザヴェータ・ペトローヴナ。その内面はエカチェリーナ二世だろうか。

 エリザヴェータはピョートル大帝の私生児として生まれ、後に正式に娘となった。その為か階級にこだわらず庶民とも会話する気さくな人物だったそうだ。ちなみに美人として有名で、特に男装を好んだと伝えられている。
 生い立ち等はシリに通じる所があるが、そこまで有能な為政者では無く父親に仕えた重臣に支えられ治世を行ったそうだ。

 エリザヴェータの次に女帝となったエカチェリーナ二世は、歴代のロシア皇帝で最も広い地域を獲得した強い女帝だ。その一方で農奴の解放や刑罰の人道化を行ったので民衆からの人気も高かった。

 シリの高い能力や人柄からすると人気の女帝エカチェリーナ二世の方がしっくりくる。しかし、エカチェリーナ二世はピョートル大帝の血統じゃないので、二人の女帝を織り混ぜたのだろう。



ラドヴィッド王

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 ラドヴィッドはエンディングに関与する重要人物だ。そんな彼のモデルとなったと思われる人物が、スウェーデン・バルト帝国のカール十二世である。

 カール十二世は軍事の天才と呼ばれた男だ。3倍もの兵力差を覆しピョートル大帝率いるロシア軍を壊滅させ、デンマークを降伏に追いやり、ポーランド・リトアニアを制圧した。

 彼は目立つ格好で王の存在を示し自ら前線で陣頭指揮して戦うのを好んだ。その戦争への情熱から銃声を「これぞ我が音楽」と評した程である。

 そんな天才カール十二世はロシアとの講和を目指しながらも、戦地の視察中に銃弾を受けて死んでしまう。この死に様から永らく暗殺説が囁かれている。
 彼の死後、スウェーデンはバルト海域から撤退しスウェーデン・バルト帝国は終わりを告げる。

 ラドヴィッドの生死がエンディングに影響する点、自ら前線に立ち暗殺されるのもカール十二世の生きざまに似ている。

 ラドヴィッド率いるレダニアはラトヴィアの支配や宗教改革を彷彿とさせる存在であり、実にスウェーデン的だったと思う。
 ラドヴィッドはウィッチャー3の陰の主人公かも知れない。



ゲームの下地としての史実

 ウィッチャーはファンタジー作品であり必ずしも歴史に忠実な訳では無い。しかし、ゲームを通じて元となる地域や国々に興味を持てるのも魅力の一つだ。

 私はウィッチャー3をプレイするまで東欧や北欧の歴史に着目することは無かった。これっぽっちもね。
 ウィッチャー3で描かれる豊かな自然と奥深い物語に触れなければ、今後もこれほど強い関心を持つ事はなかっただろう。

 映画やゲームが切っ掛けで興味関心の幅が広げられるのは喜ばしい。ウィッチャー3はその点でも優れた作品だったと私は思っている。
 


・参考書籍
物語 北欧の歴史―モデル国家の生成 (中公新書)
物語 バルト三国の歴史―エストニア・ラトヴィア・リトアニア (中公新書)
北欧史 (世界各国史)