トゥサンが舞台の『血塗られた美酒』
主人公ゲラルトの冒険の終わりが描かれるDLC。平和なトゥサンを恐怖に陥れた怪物を退治するよう依頼されたゲラルト。北方諸国を離れ、かつて訪れた豊かな南の地へと戻ってくる。
総論
トゥサンはウィッチャー3の終わりを飾るに相応しい美しい舞台。最後というだけあり十分なボリュームと本編に負けない魅力的なサブクエストが揃っている。
特に自宅が持てるのは嬉しかった。自宅で起きる最後のオマケは必見。
『血塗られた美酒』の欠点を挙げるとすれば、やや退屈な導入部だろう。楽しかった『無情なる心』のクリア後になるので落差が辛い。
公爵が治める穏やかな地
『血塗られた美酒』では私たちを広いMAPとユニークなクエストの数々で楽しませてくれる。
南に位置するワインの国トゥサンは水と緑が溢れる美しい地域だ。北方諸国と比べ全体的に明るく新しい土地を馬で駆け回るのが楽しい。
美しい城下町。実際に歩いて行けてしまうのが凄い。
平和な地なので本編と趣向こそ違うが、選択に迷うシリアスなクエストから遊び心に溢れるクエストまで盛り沢山だ。
今回のヒロイン枠となるアンナ公爵。美人揃いのウィッチャー3の中でも指折りの美しさだと思う。
ゲームを彩る追加要素
ウィッチャー3のゲームシステムは平凡だった。そこに『無情なる心』で武器の強化、『血塗られた美酒』でゲラルトの強化が拡張され少し幅が出た。
私のお気に入りだったのはアードに付加する凍結。手軽に手に入る変異ながら強力。敵を吹き飛ばし凍らせ無力化するだけでなく、時に一撃で倒せる素晴らしい能力。
本作は無双の様に多数の敵と戦うイベントが多く、敵の集団をアードで蹴散らすのが楽しかった。
以後はネタバレありの感想なので注意。
サブクエストが楽しいDLC
一転して平和なトゥサンが舞台となる為かサブクエストは呑気な話も多い。美しいトゥサンの風景を楽しみながらお使いをするのは悪くない。
サブクエストには経営者や労働者の立場としての悩みを描くクエストも多く、現代を風刺していると感じさせることも多々あった。
プレイしていてウィッチャーを必要とする時代が終わりを迎えようとしているのを感じた程である。
ウィッチャーすら唸らせる見事な去勢。レジナルド像の力は本物だったようだ。今回もアクシィーのお蔭で流血沙汰が避けられた。アクシィーは便利すぎる。
話題のVRを思わせる道具。金持ちの道楽かと思いきや歩けない娘に風景を見せたい一心からくる行動だった。本編の黒真珠と言い意外な背景にハッとさせられる。
悲しき美酒を味わう
メインストーリーでは立場と姉妹の情に揺れるアンナ公爵と命の恩人を救いたい戦友レジスとの板挟みになる。
徐々に可愛らしさを醸し出しヒロイン感が高まるアンナ。そして理性的な良き友として登場するレジス。
相変わらずウィッチャー3はどちらを選ぶか悩ませてくれる。
お忍び旅行でアンナの素顔が見えてくる。これを境にアンナは確かにヒロインとなった。
愛する女性のために友人すら殺す決断をし、『トゥサンの怪物』となったレジスの恩人、吸血鬼デトラフを助けたい気持ちはあった。
しかし、全ての黒幕であるアンナの姉シアンナを巡ってデトラフが起こした惨劇を機に、全員を救うのは難しいと感じている自分がいた。
結局、私はアンナの意思を尊重してデトラフを殺しアンナに勲章を授与される。しかし、アンナの想いは姉シアンナに届かず姉妹は共に散ることに。
最後にゲラルトとレジスは極上の一杯で哀しみと疲れを癒し、トゥサンでの冒険は幕を閉じた。
叶わなかったレジスの願い。
届かなかったアンナの想い。
悲嘆にくれる街とゲラルト。
ゲラルトとレジスが飲む美酒は少し苦い。
最後に見せるゲラルトの表情はプレイヤーへのプレゼント。
自分が到達したエンディングはバッドエンドなのだが、物語としてはしっくり来る結末だったと感じている。主に両親が原因とはいえ、幼少期の恨みを捨て姉妹が和解するのは違和感があったからだ。
ただ、今更ながら『無情なる心』から間を置かずにプレイしていたら選択は違った気もしている。なにせゲラルトは不可能を可能にする男なのだ。ゲラルトなら成し遂げられると信じれば結末は変わったかも知れない。
ゲラルトの冒険が終わる
『血塗られた美酒』のメインストーリーが終わると、ゲラルトの邸宅に本編の結果に合わせた訪問者がやって来る。
自分の場合は女帝を目指すシリだった。女帝エンドでシリを見送った我がゲラルトへのささやかな贈り物だ。
帝王学を学びだしたシリはゲラルトのことを「あなた」と呼ぶ様になっていた。二人の関係が変わってしまったのは、少し寂しい。
つい、本編のラストを思い出してしまう。
ゲラルトの領地を眺めながら語り合う二人。これが見たかった。
さて、2週目ならではの楽しみも多いだろうけれど、今しばらくはウィッチャー3を終えた余韻に浸ろうと思う。
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