ワールド・ウォーZの新世代ゾンビに驚嘆
見渡す限り1面のゾンビ。右を向けばゾンビ。左を向いてもゾンビ。挙句の果てに空からゾンビが降ってくる始末。
そして目の前に迫るゾンビの塊に銃弾の嵐をぶち込めばトリガーハッピーで脳死するほど楽しい。
映画『ワールド・ウォーZ』の名を冠した本作は、映画で描かれたゾンビ・スウォーム(群集)の迫力と魅力を見事に再現していた。
映画『ワールド・ウォーZ』が新しい理由
- 発売日: 2013/12/20
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ゲームに触れる前にゾンビ映画の歴史に触れたいと思う。
現在のゾンビのイメージは1968年の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』まで遡る。本作で死んだ者が蘇る、襲われて死ぬとゾンビになる、頭を吹っ飛ばせば倒せると言うルールが確立した。
その後、1996年公開の映画版『バイオハザード』の成功でゾンビと感染が紐づけられ、2002年の『28日後』で全力疾走するゾンビ(感染者)のイメージが一般に定着したと思われる。
そしてショッピングモールで籠城する『ゾンビ』をリメイクした『ドーン・オブ・ザ・デッド』で、感染・全力疾走・ゾンビの群れという金に物を言わせた黄金の組み合わせが完成する。
ここからB級ゾンビ映画戦国時代へ突入。○○・オブ・ザ・デッドが乱立し多彩な演出が披露されゾンビファンを喜ばせたが、もちろん一般受けはせず、暫くゾンビ映画界に新しい風は吹いてこなかった。
そこに颯爽と登場したのが『ワールド・ウォーZ』である。そこには新しいゾンビ映画の姿があった。
物語はさておき、金に物を言わせた凄まじい物量と馬鹿げた勢いで蠢くゾンビ・スウォームのインパクトは圧巻。
まるで一つの個体の様に振る舞い、高い壁を乗り越える様は正に目にしたことない映像だった。
それはゾンビ映画界における新発明と呼んでも差支え無いだろう。
その膨大な数のゾンビが襲来するゾンビ・スウォームをゲームで体験できる。こりゃゾンビファンなら群れに突っ込むしかない。
スウォームが生んだ楽しさと遊びやすさ
本作は『Left 4 Dead』と同じく4人で協力してステージを踏破するゲームであり、特定の場所でタワーディフェンス風のスウォーム襲来イベントが起きる流れとなっている。
その随所に差し込まれるスウォーム襲来イベントが、トリガーハッピー発生装置として効果的に機能していた。
私はトリガーハッピーに達するには三つの要素が必要だと考えている。
まず射撃対象に脅威が感じられ、次に一定の射撃時間が確保されること、最後は射撃効果が実感できること、この3点だ。それらをゾンビ・スウォームは、完璧に満たしていたのだ。
ステージにもよるが、スウォームが襲来すると夥しい数のゾンビが壁をよじ登ろうと集まり塊が出来る。はっきり言って気色悪い。近づきたくない。
だが放っておくとゾンビの塊は徐々に高く積みあがり、最終的に壁を越えてるまで成長してしまう。そうなれば画面いっぱいにゾンビが溢れる地獄絵図へ早変わり。
そこで4人で協力し100発以上の銃弾をもってゾンビの塊を散らかす片付ける必要が出てくる。
無防備に壁を叩くゾンビに遠慮は要らない。膨れ上がるゾンビの塊に大まかな狙いをつけ、湧き上がる衝動に任せトリガーを引き続ければいい。
目の前で大量のゾンビが薙ぎ倒され、あっと言う間にトリガーハッピーに達する。合間に爆発物で吹っ飛ばせば更に楽しい。
群れを相手するゾンビゲーでは籠城が推奨されないことが多く、ゾンビから逃げながら頭を狙うといったテクニックが必要なケースが殆どだ。これが案外シューター慣れしてない人にはハードルが高い。
その点スウォーム演出が成した、ひたすらゾンビの集団に向かって攻撃すればOKという遊びやすさは高評価。
群れが防衛拠点まで到達したら全滅必死なので、一方的に攻撃しても緊迫感が全く損なわれない。見て分かる群集の迫力も楽しさに寄与している。まったく素晴らしい発明である。
新世代ゾンビゲーの先駆けとなる作品
実のところゲーム『ワールド・ウォーZ』も映画と同じような欠点を抱えている。物語の魅力は乏しく有って無い様な物だし、プレイの多彩さはお世辞にも多いとは言えない。映画にしろゲームにしろ、良くも悪くもスウォームに始まりスウォームに終わるのである。
ゲームとして評価すれば、ゾンビゲームとゾンビ映画の世界を牽引した名作『バイオハザード』が拓いたホラー要素は皆無、パクリ元オマージュとなるゾンビCOOPの傑作『Left 4 Dead』の焼き直し感は否めず、オープンワールドとパルクールの化学反応で魅せた『Dying Light』の様な斬新さはない。価格に見合った小粒さを感じるだろう。
それでも本作のゾンビ・スウォームは素晴らしく、今後のゾンビゲームに多大な影響を与えると確信している。リアルだけどちょっと変な日本も楽しめ、フレンドと気軽に遊ぶなら最高の一本だ。
- 出版社/メーカー: Mad Dog Games
- 発売日: 2019/04/16
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