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新境地となるチームバトロワが面白い『Apex Legends』レビュー【評価/感想】

チーム戦のバトルロイヤル『Apex Legends』


 群雄割拠のバトロワに突如として現れた新星。それがチームで生き残りを競う『Apex Legends』(エーペックスレジェンズ)である。

 『エーペックスレジェンズ』は『レジェンド』と呼ばれる様々な職業・人種・理念の参加者が、名誉と栄光を目指し熾烈なサバイバルに身を投じる設定。試合中も前大会の優勝者が掲示されたり、進行状況のアナウンスが入ったりと雰囲気作りに力が入っている。
 
 『タイタンフォール』を作った『Respawn Entertainment』の新作だが、「信じてb」が印象的だった巨大ロボ・タイタンは登場せず、パイロットたちの超人的な立体機動も見られない。

 チーム戦なら『PUBG』や『フォートナイト』にだってあるじゃないか。タイタンも立体機動もないのに、何がそんなに面白いの?そんな疑問もあるだろう。

 その答えは『Apex Legends』がバトロワとタクティカルシューターが交じり合った独特なプレイ感覚にあった。

個人技で勝つ『フォートナイト』への対抗馬

 2018年におけるバトロワの覇者は『フォートナイト』で異論はないだろう。建築物の弱体化で緩和されつつあるが、『フォートナイト』は複数相手でも実力差があれば平気で倒せてしまうソロプレイ向きの調整だ。

 終盤の熟練者同士の空中戦は凄まじく、摩天楼の如く高く積みあがる足場とショットガンで致命打を狙う様は、さながら格闘ゲームの華麗なコンボ(連続技)である。バトロワの分かりやすいルール、建築の見て分かる凄さ、配信や動画で人気を博するのも納得できる。

 しかし、その性質からチーム戦でも接近し個々で空中戦を制する方が強い感は否めない。それはそれで面白いのだが、連携して戦う時の熱さが足りなかった。『エーペックスレジェンズ』はソコに切り込んだのだ。


連携を促すロールの存在

 『エーペックスレジェンズ』の操作キャラクターとなる各『レジェンド』には『オーバーウォッチ』の様にロール(役割)が定められ、それぞれ固有のアビリティやアルティメットを備えている。

 しかし『オーバーウォッチ』の様に直接相手を倒すような目的の能力は無く、バトロワらしく地形の有利不利を覆すことに重点が置かれている。

 例えば銃弾を防ぐドーム型シールドを展開し味方を守る『ジブラルタル』、チーム傷ついたりダウンした仲間を素早く助けられる『ライフライン』、はたまたグラップリングで自身やチームを有利な場所へ運べる『パスファインダー』、といった具合に『レジェンド』は差別化されている。

 その『レジェンド』の組み合わせによるシナジー効果も魅力の一つとなっている。例えば『バンガロール』の発煙弾で敵の視界を遮り、敵の位置が見える『ブラッドハウンド』のアルティメットで煙幕越しに攻撃するといった具合だ。

 もちろんバトロワらしく武器やアイテムは全員共通。チーム内で同一『レジェンド』の選択こそ制限されているが、フィールドに降り立ってからのアイテム争奪戦も健在。ライバルを打ち倒して装備を整えるのが勝利への近道になっている。



チーム戦特化ゆえのリスポーン

 バトロワはテンポの良さが魅力の一つとして挙げられる。あなたは降下して武器争奪戦に負けてしまったとしよう。しかし、運が無かったと肩をすくめ、すぐさま次の試合へ挑める。

 これはソロだと素晴らしく機能するが、チーム戦だとそうもいかない。早期に脱落すれば長々とチームメンバーの雄姿を応援することを余儀なくされる。そして画面の前に座って見てるだけの時間が長々と続く。中々しんどい。

 その点チーム単位で戦う『エーペックスレジェンド』は、『ノックアウトシールド』による生存率アップとタグの回収によるリスポーン(再出撃)の機会が設けられている。ゲームはプレイしてナンボ。長くプレイしやすいのは素直に嬉しい。

 質の良い『ノックダウンシールド』は『レジェンド』の実に3倍以上の耐久値を誇り、ダウンしても止めを刺されにくい。さらにタクティカルシューターである『レインボーシックス シージ』の様にピンを立てられるので、ダウンしても味方に敵の位置を伝えることでチームの力になれる。

 仮に激戦の末にダウンしたチームメンバーが退場しても、一定時間内にタグを回収しMAPに点在する『リスポーンドローン』へ運べば再び戦地へと戻れる。

 ただ『フォートナイト』のリスポーンと違い獲得した装備は『デスボックス』内に全て置いて行ってしまう。倒されると不利なのは変わらず、バトロワらしい緊張感はきっちり残されている。

不自由なキャラピックからの脱却

 『オーバーウォッチ』や『レインボーシックスシージ』をプレイした方は分かると思う。ロールの存在はMAPや戦術の研究が進むと定番や必須のキャラクターや構成が出てくることを。そして魅力的なキャラクターが勢ぞろいと謳っても、なんてことない結局はMAP構造に縛られていく。

 その結果として「え。ここでラインハルト選ばないの?」「テルミット居ないとか無いわー」となっていく。

 しかし、これがバトロワならどうだろう。降下位置は選べても激戦区を作るエリア縮小はランダムで、三つ巴や不意打ちが当たり前のルールだ。試合前にライバルのメタ(対策)を考えても無駄である。

 だから『エーペックスレジェンズ』にはロールによる戦略の多様性を得ながらも、ピックにおける閉塞感はなく好きに選べる開放感がある。それが遊びやすさへと繋がっている。*1
 

  

受け継がれたタイタンフォールの理念

 今年も『フォートナイト』一強かと思われたバトロワ界。そこに『Respawn Entertainment』が新しいバトロワを持ち込んだのは、かつてCoD系一色だったシューター界に『タイタンフォール』を引っ提げ風穴を開けたのを彷彿とさせる。

 『タイタンフォール』では2つの層を重ね合わせたようなレベルデザインにしたと答えている。

 スピンオフとなる『エーペックスレジェンズ』でも、その理念は変わらない。

 基本の立ち回りはバトロワらしく、いざ撃ち合えばタクティカルシュータ―の様な駆け引きがある。
 
 その二つの層が重なり引き起こされる変化に対応し、見事に状況を打開した時の興奮と熱さに夢中になる。


 もちろん懸念はある。『オーバーウォッチ』や『レインボーシックス シージ』と同じくパーティー前提のバランスな点だ。

 どうしたって野良で遊ぶ人には辛い。今後はソロも導入するらしいが、チーム戦に特化した魅力が薄れる恐れもある。

 かつて『タイタンフォール』でBOTを入れ対策したように、斬新な解決策が期待される。

*1:徐々に定番の組み合わせは出来つつあるが縛りは緩い。