フィンチ家の秘密を求める小旅行
ワシントン州に住む一族を巡る物語。プレイヤーは一族の血を引く『Edith』として、フィンチ家の奇妙な屋敷を舞台に数奇な運命を辿った一族の謎に迫る。
総論
一族最後の一人である『Edith』となりフィンチ家が抱えた謎と想いを辿る本作。ストーリー重視のお散歩ゲーかと思いきやゲーム面も楽しい作品。字幕が効果的に使われているお蔭で物語にすんなり入り込めた。
異様なフィンチ家の屋敷を探索するのは楽しく、一族の最期を垣間見るシーンは興味深い。家と人との繋がりを辿る過程に引き込まれ一気にプレイしてしまった程である。
プレイ初期は少し画面酔いしそうな感覚はあるが直ぐに慣れると思う。また登場人物に共感し難い印象があるが、そこは残された人々の心情が重要なので大きな欠点ともならないだろう。
予想以上にゲームであった本作
何をもってゲームと呼ぶかは難しい話ではあるのだが、プレイ初期の印象ではレビューや考察を書いた『Everybody's Gone to the Rapture –幸福な消失–』に近い物を感じた。
『ナラティブ・アドベンチャー』と呼ばれる、ただ歩いてフィンチ家の歴史の断片を拾い集めていくタイプの作品だと思ったのである。
しかし、その考えは最初の人物となる『Molly』の記録に触れた時に粉々に壊された。彼女の最期を追体験するシーンはとても面白く印象的だったのだ。
中でもゲーマーでもある『Lewis』の記録で触れる一連のイベントは素晴らしかった。是非体験して欲しいと思う。
部屋と人の繋がりを感じる
保存された一族の部屋を巡る過程には『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』を彷彿とさせた。部屋に遺された品々が主の性格や好みを語ってくるのだ。
特に一族の記録を体験した後だと部屋への印象がガラリと変わる。部屋を訪れた時と去る時で部屋に対する印象が変わるのが『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』における最大の楽しみだった。
やや残念なのは屋敷をフィンチ家の博物館として表現する余りに奇抜なデザインにし過ぎた点だ。それ壊れるだろ!と突っ込み入れたくなる上階の構造は感動を削ぎかねないと感じた。
遺族の想いに寄り添う作品
プレイヤーの分身となる『Edith』も一族のことは余り詳しく知らない。だからこそ彼女の独白と共に屋敷を巡る探索は楽しかった。特に小説を読ませるかの様な効果的な字幕の配置のセンスが輝いていた。
フィンチ一族は割と変人・奇人が多く各人の抱く信念に殉じた様子が伺える。振り回される周りの苦労は一際だっただろう。それでも突如として家族を失った悲しみは強く、部屋と共に思い出と悲しみを保存する選択をしたのだ。
少し死別の経験で感想や評価が変わりそうな作品。それでも『Edith』と共に奇妙な屋敷を巡る経験は素晴らしい物であった。
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