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傑作、シン・ゴジラ感想

シン・ゴジラは確かに面白い

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 遅れ馳せながらシン・ゴジラを見てきた。リアリティに溢れ、もう一度見たいと思える優れた作品だった。

 シン・ゴジラは首都圏に住む人だと面白さが倍増するだろう。ゴジラがいる風景に変なリアリティを感じるのだ。Twitterで自社や取引先が壊されたとか話題になるのも分かる。

 ネタバレ満載で感想を垂れ流すので、まだ見てない人は注意。


政治と人を描く序章

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 序章では内閣の映像や避難する人々の姿が多い。特に印象に残っているのは職人技で創られていく特設本部の姿と、屋上から街を闊歩するゴジラを撮影する人々。

 全体的に日本における政治の姿が語られ、「へ~そうなんだ」とか「こんな風に設営してるんだ」と感心。

 ちょっとお茶目で頼り無さげ総理と曲者揃いの閣僚達の掛け合いも面白かった。いや、本当にこんな感じかと思うと少し困惑するけど。
 

頼もしき自衛隊の活躍

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 全編を通して最も楽しかったシーン。空を戦闘ヘリが舞い躍り大地を戦車が埋め尽くす姿は必見。
 もちろん様式美として通用しないことは分かっていたが、それでも作戦を立案し実行する自衛隊の姿は実に頼もしかった。
 
 このシーンを心から楽しめたのは、富士総合火力演習を見学した経験があったからだと思う。実際の戦車砲の炸裂音と衝撃波は熱烈な兵器ファンではない自分でも忘れられない体験だった。

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 以前バーベキューで訪れた多摩川に自衛隊の部隊が展開し、10式戦車がゴジラを砲撃する姿にリアリティを感じずには居られなかった。ゴジラ以外は実際に目にし体験しているから当然かも。


悲惨な絵に衝撃を受ける

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 結局、自衛隊の奮戦も虚しくゴジラの東京侵攻を許してしまう。総理を始めとする閣僚の避難も開始し、アメリカ軍による攻撃支援が決定する。

 空爆によるダメージで苦悶するゴジラ。さすがは戦争大好きアメリカ様はお強いですな。そう思った瞬間ゴジラが攻撃に転じた。

 思い返せばここまでゴジラは散歩していただけ。明確な攻撃はなかった。しかし、この瞬間からゴジラは明確に敵意を見せた。

 炎を吐き出し炎上する東京。激しく燃え上がる火焔に震災で起きたプラント火災を思い出す。そして、放たれる放射熱線。

 その時に「あ。」誰かの呟きが聞こえた。気持ちは分かる。自分もリアリティがありすぎてニュースで災害を見たかの様な感覚があった。


締めを飾るヤシオリ作戦

 圧倒的なゴジラを前にして、諸外国は戦術核を用いる決定を下す。血液凝固剤を使った『ヤシオリ作戦』でゴジラを倒せなければ東京に未来はない。


 肝心の経口投与する映像は地味ではあるが、突撃し宙を舞い爆裂する山の手線、ミサイルで倒壊するビル群と『ヤシオリ作戦』の見せ場は中々のもの。

 多くの人が関わり準備が整っていく流れは庵野監督が好きな形。作戦中もタンクの接続をしている人の存在が描かれる。
 描写されないが熱線や尻尾で吹き飛ばされた名も無き英雄がいたと教えてくれる。

 多くの代償を支払いながらも作戦は成功し、戦術核の発射直前でゴジラは凍結し動きを止める。そのシーンで劇場内に「ほっ」とため息が洩れたのを確かに感じた。


シン・ゴジラの魅力はリアリティ

 シン・ゴジラのドキュメンタリーの様な空気に触れると、日々流れるニュースの話題に関して意識せざるを得ない。

 序盤では内閣の素早い対応と手順が多さからくる意思決定が遅さを、中盤で自衛隊の心強さを感じつつ、その制限の多さを知った。

 終盤ではアメリカ軍の強さと必要性は認められるが、最終的には決して諸外国は守ってくれないと言う事実を突き付けられた。

 ゴジラを見終わって自国のことは自国でやる。それが当たり前だと再認識させられる。全ては特撮が成したリアリティある映像のお陰だろう。特撮を舐めていました。すみません。


 それにしても問題の先送りとなった結末に納得できてしまうのは、地震・台風に見舞われる災害大国日本に住むからだろうか?

 そんなことを、ぼんやりと考えてしまった。