光と音を打ちつけてきた『Thumper』
海外でも好評価の『Thumper』(サンパー)はカブトガニの様な姿をした「スペースビートル」を操作しステージを踏破し最後に待ち受けるボスを撃破するリズム・バイオレンスゲームだ。
リズムゲーは分かる。しかしバイオレンスとはなんだ?誰もが思う疑問の答えはプレイ直後に分かるだろう。
『Thumper』はひたすらプレイヤーに不気味な映像を繰り出してくるのだ。そしてプレイヤーはその映像を音と光で叩き伏せていく。なるほど。確かにこれは暴力的なゲームだ。
特にVRでプレイした時は殴られたような衝撃を受けた。VRだから感じる疾走感。そして果ての見えない道。迫りくるグロテスクな表現。『Thumper』はVR空間を使って乱暴なまでに視覚と聴覚を刺激してきたのだ。
基本は王道のリズムゲー
『Thumper』は迫りくる障壁をスティックとボタンを組み合わせて越えていくゲームで、成功すれば音と光が発生し失敗するとゲームオーバーだ(正確には2ライフ制となる)。タイミングよく障壁を越え続けることで気味よい効果音がリズムを刻み瞬く光が画面を彩る。
最初は簡単だが徐々に難易度が上がりコンテニューを繰り返すことも多かったが、リスタートが早くチェックポイントも多いのでストレスは少なかった。何度も繰り返すうちにパターンを覚え難所をクリアする爽快感はリズムゲームの醍醐味だろう。
そんな王道のゲーム性に加えられたのが不気味な映像とスピード感だ。
美醜が入り乱れる空間は圧巻
『Thumper』は美しくもグロテスクなゲームだ。宇宙や深海を延々と伸びるレールに沿って疾走してる気分になったかと思えば、コースが不気味に枝分かれする様子は血管や神経を連想させ体内を走るかの様だ。
そんな美しさと不気味さが交差する道のりを白銀の「スペースビートル」が光を放ちながら進む姿は、まるで歪な世界を浄化している気分にもなる。
このグロテスクなステージと美しい光の対比が素晴らしかった。これは『Bloodborne』でも感じたことだが、自分は美醜が入り混じった映像が好きなのである。
この不気味な世界やボスを決め技(?)となる光の塊で撃破するのは爽快だ。
スピードが集中力を高めていく
もう一つの特徴はスピード感である。ジェットコースターを彷彿とさせる速度と動きが自然と中央を凝視させ自然と集中力が増していく。そんな集中状態でリズムを刻み光を浴び続けるのだから普段より感受性が高まるのは不思議じゃない。
音は呼吸や鼓動に影響を与えると言われている。ゲームスピードが上がればリズムのテンポも早くなり、自然とテンションも上がってくる。
このジェットコースターの様な疾走感がVRとの相性が抜群なのだ。『Rez Infinite』がVRで広さを表現したのに対して『Thumper』は徹底的にVRが与える奥行きを追及している。
このアトラクションとリズムゲームが融合した体験に夢中になるのだ。
欠点は少し単調に感じる演出
『Thumper』のプレイ直後の衝撃や難所を越えステージをクリアした際に湧き上がる達成感は中毒的なものがある。
この楽しさは『Rez Infinite』の心地いい穏やかな高揚感とは真逆に近い。例えるなら人気FPSであるCoDで連続して敵を倒した時に得られる興奮だろうか。
唯一残念なのは演出にちょっとマンネリ感を感じる点だ。肝心のゲーム部分は十分な変化があるのだが、不気味な演出のパターンが少なく慣れてしまうのだ。
もっとも、演出に気を取られると失敗してしまうので、この位が丁度いい塩梅なのかも知れない。
十分なリプレイ性がある本作は『Rez Infinite』と共にPSVRのローンチタイトルにおける双璧と呼ぶに相応しいゲームだった。