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[ネタバレ]バットマン アーカムナイト感想・考察~ジョーカーとの旅その終着点~

アーカムナイトで感じる悪役ジョーカーの魅力

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 世界で人気シリーズとなったバットマン アーカムシリーズ。その最終作はジョーカーとのゴッサム小旅行であった。本作はジョーカーの物語と言っても良いくらいである。

 映画ダークナイトで一気に注目を浴びた印象のあるジョーカー。ちょっとヒース・レジャー版ジョーカーが格好よすぎたので、アーカム版ジョーカーに違和感があった人も居るかも知れない。
 それでもゴッサムを巡る中で、あなたはアーカム版ジョーカーにも魅力を感じただろう。残酷な道化師であるジョーカー。バットマンの精神に住み着いた彼の振る舞いや言葉は妖しく魅力的だ。
 


ジョーカー、その悪の美学

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 面白い作品に欠かせないのが魅力的な悪役である。長く人気のある悪役と言えば「ジョジョの奇妙な冒険」のDIOや「ドラゴンボール」のフリーザ辺りが思い浮かぶ。そんな人気キャラに共通するのが悪の美学だ。私達は一貫性のある主張と行動に強く惹かれるのだ。その点ではバットマンのジョーカーは負けていない。




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 緑の髪に白塗りの顔、笑みを絶やさぬ赤く大きな口、「ピエロ」を模した姿のジョーカー。彼は人生を楽しんでおり、犯罪を通して詰まらない社会を面白くしたいと考えている。その為には手段を選ばない。彼自身の命を含めて人間と社会で遊ぶのだ。
 面白おかしくおどけ、鋭い言葉で社会や人間が抱える矛盾を突いてくるジョーカーの言葉。時にそれは人間の弱さや社会からはみ出した犯罪者たちの擁護になる。ジョジョでンドゥールが悪には悪の救世主が必要と言ったように、ジョーカーは犯罪者の救世主。そう、悪の王であった。

    

新たな王スケアクロウ

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 作品を語る上でバットマンとジョーカーはセットとして語られる事が多い。しかし、その関係はヒーローとヴィラン(悪役)とした単純な関係ではない。本質的には二人は似た者同士であり、バットマンは「恐怖」をジョーカーは「狂気」の象徴として描かれている。
 ジョーカーと言う王を失ったヴィランはスケアクロウを新たな王として擁立しバットマンに立ち向かう。バットマンという恐怖に対してスケアクロウという恐怖を用いて立ち向かったのだ。

 スケアクロウが目指す恐怖による人の支配と言う構造はバットマンが犯罪者に対して行っている事でもある。手段と対象こそ違うが同じ恐怖を使って相手を支配してきた二人だ。どちらがより強い恐怖を与え屈服させるかの勝負である。

 バットマンはヴィラン達との違いを明白にするために「不殺の誓い」を立てていた。しかし、ジョーカーの死を切っ掛けにその信念は揺らぎ、続く仲間や協力者の犠牲により崩れた信念。バットマンはスケアクロウそして内なるジョーカーに敗北する。
 

ジョーカーが引き出したバットマンの狂気

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 ジョーカーはバットマンの精神世界でヴィラン達を皆殺しにする。それはバットマンが望みながらも決してできない行為だ。
 バットマンは幼い子供の頃に両親を犯罪者に殺されている。だから彼は犯罪者を、そして殺人を決して許しはしない。長く正体を隠しゴッサムを掃除してきたバットマンを突き動かすのは正義の心ではない。狂気とも言える怒りと憎しみである。




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 ジョーカーは自分の死すら恐れない狂気の王だった。しかし、彼はバットマンの精神世界で忘れ去られる恐怖を感じ、自身の根底にある狂気を思い出したバットマンに屈服する事となる。ジョーカーは最後まで勇気をもってバットマンに抵抗したが敵わなかった。たしかに勇気で恐怖を乗り越えられる。だが恐怖を討ち滅ぼせるのは狂気なのだ。
 同様にバットマンの仮面を脱ぎ捨てたブルースに隠されていた狂気の前にスケアクロウも敗北する。

 確かにジョーカーとスケアクロウはバットマンを倒した。しかし、ジョーカーは情報を風化させる社会に、スケアクロウはブルース(人)に敗れることになった。
 

新たな力を得たバットマン

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 私は宿敵ジョーカーとバットマンの関係が深く描かれた形となるアーカムナイトに満足している。特に結果としてスケアクロウを倒す切っ掛けとなるのがジョーカーなのが良い。やはりジョーカーあってのバットマンだ。

 シリーズの終わりは悲しいがジョーカー亡き今となってはシリーズを続ける意味もないとも感じる。それほどまでにジョーカーの存在は大きかった。ジョーカーとの奇妙な同居を経験してしまったのでスケアクロウと決着を付けた後のゴッサムは酷くさみしい。ああ、終わりなのだと実感した。
 

 エンディングで表現されるようにジョーカーとスケアクロウという二人の宿敵がバットマンに更なる力を与えた。驚愕の結末により語り継がれる存在となったバットマン。そして犯罪者達が浴びた恐怖ガスによる幻覚。この二つが合わさりバットマンは再びゴッサムの守護者となった。

 もう協力者が人質になることもない。正体を探し出すこともできない。恐怖が恐怖を呼ぶ噂の連鎖を糧にバットマンは幻影として生き続ける。バットマンはこれからもゴッサムの街を守り続けるのだ。


 


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